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不服申し立てが急増

平成27年7月26日に日本経済新聞が、障害年金に関する不服申し立てが10年前に比べて3.5倍に増えたと報じています。詳しい記事の内容は、当日の日経新聞朝刊の社会面をご覧ください。

不服申立というのは、年金の申請をしたけれど、不支給となったとか、障害年金の場合にはさらに、自分が思っている障害等級よりも低い等級でしか認められなかったといったときに、もう一度、年金の請求内容を精査して不支給を取り消してほしいとか、より重い等級に認定してほしいということを申し立てることができる制度です。詳しくはこちらをご覧ください。

年金などの社会保険の給付については、不服申し立てが2回できることになっているのですが、新聞報道では、3.5倍に増えたのは障害年金の1回目の審査請求の件数で、2回目の再審査請求申立てはもっと多い4.4倍に増えたとなっています。

具体的な数字は厚生労働省から発表されていて、私が見つけられたのは、再審査請求(2回目の不服申立て)の申立件数ですが、平成26年度には、2,163件の申立ての内、障害年金関係は1,545件(7割以上)となっています。審査請求(1回目の不服申立て)はもっともっと数が多いはずです。
最新の統計では、平成30年度に受付された申立件数は1,628件で、そのうちの1,246件が障害年金関係でした。遺族年金関係は50件でした。ただし、その他に分類されている件数143件の中にも若干障害年金や遺族年金に関係する申し立てがある場合があるので、申立件数としてはもう少し多いかと思います。

では、不服申立てしたことによって、年金がもらえるようになったり、重い方の障害等級に認定し直されたりしたのはどのくらいの割合なのでしょうか?

平成16年度と平成30年度を比較してみましょう。

障害年金だけではなく再審査請求全体の数字です。再審査請求の受付件数も多いですが、結論が翌年度に持ち越しになった件数が相当数含まれているので、実際にその年度内に審査された件数との比較で見てみましょう。また、審査する前に年金を出すことにしたり障害等級を見直したりした件数(処分変更)もありますのでこれも認められた件数に含めます(下の括弧の中で、うしろの数字が処分変更となった件数です)。

再審査件数    認められた件数     割合
H16     575    192(83+109)  約33%
H30   1,480    204(91+113)  約14%

H30年度では申請件数は増えたけれど、認められた割合を見ると10年前より20ポイントも低くなっています。以前は1/3の確率で認められたのに、最近はは1/7の確率に下がってしまったということです。

これは審査基準が昔に比べて厳しくなったからだというご意見もあるようですが、15年以上前から(再)審査請求の代理人業務をお引き受けしてきた私の経験では、審査基準にはそれほど顕著な差はないように思います。むしろ、不服申し立ての内容が複雑化してきていて、それを法律のどの部分に当てはめて(再)審査請求するのかが難しくなってきているのではないかと思います。障害年金で見れば、精神疾患(うつ病や統合失調症など)を原因とする障害年金申請は急増していますし、遺族年金関係でも、DVによる別居が原因で生計維持関係が認められなかったケースなどが多発しています。(追記:令和元年10月にDV別居を認める場合について、厚生労働省から具体的な指示が出ているようです)。

不服申し立ては、1度出された行政の判断を覆すための救済制度にすぎませんから、ハードルはかなり高いです。また、審査請求の結論(決定)が出るまでに約半年、再審査請求の申し立てから結論(裁決)が出るまでにさらに半年から1年ほどかかってしまいますから、年金の申請の時から2年近くかかってしまいます。不服申し立てが認められて年金が出るようになれば、もちろんさかのぼって出ますから、損をするようなことはありませんが、それまでの経済的、精神的な負担はかなり大きいです。

私の経験では、年金申請の段階で(年金事務所に書類を出すとき)できるだけ書類をそろえて、状況を説明して、この段階で支給されるように最善を尽くすことが一番だと思います。もし年金の請求の時点で、不安なことやわからないことがあれば、まずは専門家に相談されることを強くお勧めします。

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