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DV別居を余儀なくされた妻が遺族年金支給を求めた裁判

 令和元年12月19日に東京地裁で、遺族厚生年金の支給を認める判決がありました。新聞各社もこの判決を報道していて、GoogleやYahoo検索で、「遺族年金 DV別居 東京地裁」の3つのキーワードを並べると、各社の報道のサイトが出てきます。
  この事件は、夫のDV(それも身体的暴力)から逃れて13年間別居生活が続いた妻が、夫の死亡後に遺族厚生年金を請求したところ、国は不支給の決定をしたことから、妻が不支給処分の取り消しを求めていたものです。
 不支給の理由は、夫と妻の間に音信や経済的援助がなく、長期の別居期間により夫婦関係が形骸化していて生計同一関係が認められないため遺族年金を支給しない、というものでした。
 これに対して、妻は2度の不服申し立て(社会保険審査請求、再審査請求)を経て、国を相手に提訴したのですが、その判決が、国に対して、遺族厚生年金不支給を取り消して、年金を支給せよというものでした。
 まだ令和2年1月2日まで控訴期間がありますので、国の今後の対応によっては、この判決が確定するかどうかわかりませんが、マスコミ各社が報道したことから想像するに、社会に対するインパクトは大きかったのではないかと思います。 (令和2年1月追記:国は控訴しませんでしたので、この判決が確定しています。) 
 さらに、この判決の2か月前の10月に厚生労働省が、日本年金機構にDV被害によって別居していた他方配偶者(通常は妻が該当すると思います)に遺族年金を支給するよう指示したという報道(12月中旬にマスコミ各社が報道)もあり、ここへ来てDV被害に対する年金支給基準の見直しが始まったのかもしれないとにわかに期待しています。ただ、詳細がまだわかっていないので、期待までです。
  もっと言えば、先月11月15日付厚労省の通知で、DV被害者が、婦人相談所などの行政窓口に相談に行き、保護された際に作成される、「配偶者からの暴力の被害者の保護に関する証明書」の注意書きに、「本証明書の用途は、(中略)又は遺族年金等の生計同一要件の認定に使用する場合に限る。」と下線部分が追加されました。 これは、あくまでも私の想像ですが、この証明書があれば、別居期間について生計同一があったものとみなすということが予定されているのではないかと思います。
 というのも、DV被害を受けやむなく別居していたことを、夫の死後に証明するのは大変難しく、たとえば、警察にDV夫のことを相談した履歴があるとか、行政窓口で相談してその調書が残っているとかといったことや、近所や友人知人にDV被害にあっていたことを証言してもらうなどのことが必要にあるからです。こうしたことは、被害者が知人とはいえ他人に証言を頼むことについて抵抗感が強いことや、時が経てばたつほど、書類をそろえることが困難になるといった事情があり、証拠となる資料を集めることが難しいにもかかわらず、別居期間が長い場合は特にこうした証拠が大変重要になってくるので、私もご相談を受けたときに一番苦労するポイントです。
 そうしたことがこの証明書一枚によって証明できることになれば、遺族年金申請者の負担はとても軽減されます。 こうした一連の動きがDV被害者の遺族年金申請の負担軽減を目指しているものだとすれば、素直に、これを歓迎したいと思います。

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