遺族厚生年金の金額の特例
遺族厚生年金の金額は、厚生年金に加入していた期間とその期間の平均の報酬から計算するのでしたね。
ところで、厚生年金の期間が短く、そのまま計算すると、年額でも低くなってしまうことがあります。極端な例ですが計算してみましょう。(令和元年度の係数です)
厚生年金加入10ヵ月(平成15年4月以降)、その期間の平均標準報酬額300,000円
300,000 ×10 ×5.769/1000 ×1.000 ×0.75=12,980円
1ヵ月千円ちょっとの金額になってしまいます。これでは、一家を支えてきた働き手が亡くなったときの遺族への補償というにはあまりにも低すぎます。
そこで、加入月を300ヵ月として計算するという特例があります。
但し、以下の条件がありますので、これを満たしていなければなりません。
1.厚生年金加入中に死亡したこと(在職中の死亡)
2.厚生年金加入期間中に初診日があり、退職後、その病状が悪化して初診日から5年以内に死亡したとき
3.障害厚生年金1,2級を受給している人が死亡したとき
この内、1か2に当てはまる人の場合には、年金保険料の納付要件を同時に満たしていなければなりません。
年金保険料の納付要件とは
① 初診日の前々月までの、国の年金制度の加入期間の内、3分の2以上の期間保険料を納付していること(免除や猶予の期間を含む)この①に当てはまれば、②の基準を満たさなくても良い。
② または、初診日の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと(令和8年3月31日までの特例)この②に当てはまれば、①の基準を満たさなくても良い。
つまり保険料の未納期間があると遺族年金がもらえない場合があるということです。厚生年金加入中の死亡でも、その前の国民年金に未納期間があって、1と2のどちらの基準も満たさなければ、遺族厚生年金も遺族基礎年金も出ません。少なくとも過去1年間に未納期間が無いようにしておきましょう。
さて、この300ヵ月みなしの特例に当てはまる場合には、金額はどのようになるか、先ほどの例を使って計算してみましょう。
300,000 ×300 ×5.769/1000 ×1.000 ×0.75=389,407円
これでも十分とは言えませんが、先ほどの1万3千円よりはずっと多い金額です。
また、遺族基礎年金が出ればプラス約100万円、遺族基礎年金が出なくても夫の死亡時に妻が40歳以上なら、厚生年金の加入月数が300月みなしとなることにより、妻に中高齢寡婦加算(585,100円)が加算されますから、この特例の効果は大変大きいものです。
ですから、未納だけはしないようにしましょう。
2011年2月11日 12:12 PM | カテゴリー:遺族年金の基礎知識