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初診日から5年以内の死亡

遺族厚生年金が出るかどうかの条件のひとつに、いわゆる初診日から5年以内の死亡というものがあります。

もちろん亡くなった方が厚生年金に加入していて、その遺族が遺族厚生年金を受給するということは変わりがありません。

まずは、架空の事例を作りましたので、これで状況を把握してみてください。

Aさんは大学卒業後すぐに今の会社に入社し、その後20年勤めていて、その間ずっと厚生年金に加入していました。良くあることではありますが、学生時代は国民年金保険料を払っていませんでしたし、学生納付猶予特例の手続きも取っていませんでした。(平成3年度以前の学生期間はありません。)

あるとき体調がすぐれないことが続いたAさんは、かかりつけのクリニックで診察を受けたところ、肺がんの疑いがあると診断されました。その医師からは、大きな病院へ行くように言われて、紹介状を書いてもらい、大病院で検査を受けたところやはり肺がんと診断されました。

Aさんはその後も治療を継続していましたが、3年ほどすると体力がどんどん落ちてしまい会社に行くことができなくなってしまったので、退職しました。

その後も治療を続けていたAさんですが、退職してから1年後に亡くなりました。死亡診断書の死亡の原因は肺がんと書かれていました。残された家族は、奥さんと大学1年生の子1人です。

Q: この場合遺族年金は出るでしょうか?
A: 遺族厚生年金は出ます。(妻の受給要件はすべて満たしているとします。)

その理由は、遺族厚生年金が出る条件のひとつに、
① 死亡したときには厚生年金に加入していなかったが、
② 厚生年金加入期間中の初診日から5年以内に
③ 初診日に診断されたのと同じ病気で死亡した。
④ 初診日の前日における保険料納付要件を満たしていること

を全部満たせは遺族厚生年金が出ることになっているからです。この場合は、保険料納付期間25年の条件はつきません。

これをAさんのケースに当てはめてみましょう。

① Aさんが死亡したときはすでに会社を辞めていたので、厚生年金に加入していませんでした。国民年金には加入していましたがそれでも保険料納付期間が25年に満たないのですが、このケースでは25年納付の条件は要求されません。
② Aさんが亡くなったのは、病気が発見された初診日から4年目でしたから初診日から5年以内の死亡です。
③ 受診状況等証明書*に書かれた病名と死亡診断書の死亡の原因の病名が同じでしたから、初診日に診断された病気で亡くなったことが証明されています。
④ 会社に入ってから20年間ずっと厚生年金保険料を払ってきたので、初診日の前日における保険料納付要件(過去1年間に未納がないこと)を満たします。

このように①から④のすべての条件を満たしたので、妻に遺族厚生年金が出ることになりました。遺族厚生年金の金額は他の条件で出る場合と同じです。

*)受信状況等証明書というのは、Aさんが亡くなったあと、初診をした医師に当時の診察の状況を書いてもらう用紙のことです。専用の用紙でこちらからダウンロードできます。(なお、この用紙には「障害年金等の請求を行うとき~」と書いてありますが遺族厚生年金用にも使えます。)

なお、Aさんのケースのように初診日に診断された病名と死亡の原因となった病名が一致していれば良いのですが、実際には、死亡の原因が肺炎など別の病名となっているケースもあります。こうした場合、遺族厚生年金を申請しても、病名が一致しないので不安ですが、過去においては、死亡の直接の原因がもともとの病気によるものであったということが証明されれば、認められることもあるようです。

それでは、このケースで、ほかの条件を使ったら結果はどうなるのでしょうか?

1.遺族基礎年金は出るでしょうか?
お子様がすでに大学生ということですから、遺族基礎年金の条件である18歳の誕生日直後の3月31日を過ぎてしまっています。したがって遺族基礎年金は出ません。
ただし、妻に遺族厚生年金が出れば、中高齢寡婦加算が上乗せで出ます。
2.別の条件を使っても遺族厚生年金は出るでしょうか?
① 厚生年金加入期間中の死亡であること:
Aさんが死亡した時には厚生年金加入中ではなかったので、たとえ死亡前1年間の保険料をすべて払っていたとしても、この条件を満たしてはいませんから出ません。
② 保険料納付済期間が25年以上あること:
保険料納付済み期間が23年で、学生時代の納付猶予期間もないので25年に2年足りませんから、この条件を使っても遺族厚生年金は出ません。
③ 1級又は2級に該当する障害の状態にある障害厚生年金の受給権者が死亡した:
ガンにかかって症状が重いときには障害厚生年金の対象となりますが、Aさんが生前1級または2級の障害の状態であったかどうかを証明することがかなり難しいと思われます。障害年金の申請を生前に受給していたことが必須なわけではありませんから可能性はあります。

なお、原則として健康診断を受けた日が初診日となることはありませんので、検診の結果で有所見の場合には必ず医療機関で診察を受けてください。

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